今回は、美少女×放置型RPGで、事前登録プロモーションのCPI(インストール単価)を競合平均と比べて63%安く獲得できた成功事例を紹介します。このプロジェクトでは、事前登録期からリリース後の施策までをすべてお手伝いさせてもらいました。
事前登録プロモーションの進め方や、そこで得られた実践的な知見、美少女×放置型RPGの特徴を活かしながら、どのように戦略を組み立て、広告運用の成果を最大化したのかなど、具体的な広告用クリエイティブも交えながら解説します。
今回の記事を制作するにあたって、有限会社ウルクスヘブン様に実際のゲームタイトルとそのデータ数値の公開をご快諾いただきました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。(具体的な金額は伏せて記事を制作しております)
ご協力をいただいたゲームタイトルは以下です。
もんなし姫騎士団

プリンセスなのにビンボー?!ゴブリンに経済支配された世界を元に戻すため、姫騎士たちが『オシゴト』でお金を稼いでゴブリンに立ち向かうゲームです。お気楽放置育成系RPGの名の通り、放置型RPGのお手軽さだけでなくやりこみ要素もしっかり盛り込まれており、バトル中のキャラクターとのチャットやチャレンジバトルにハマること間違いなし!
- 公式サイト:https://himekishi.ullucus.com/
- 公式Xアカウント:https://twitter.com/monpri_info
- iOS:App Store
- Android:Google Play
目次
はじめに(自己紹介)
本文に入る前に、私、Mr.GAMEHITのクリエイティブ・ディレクターである佐藤昭博の自己紹介をさせてください。
ゲームは生まれた時から身近にあり、クリエイティブに関わる仕事を10年以上やってきました。以下、簡単な私のプロフィールです。
佐藤昭博プロフィール
・福岡県出身
・幼少期から家にゲームがある環境
・初めてプレイしたゲームはファミリーコンピュータのスーパーマリオブラザーズ
・Webデザイナーとしてキャリアをスタート
・ゲーム広告サービス「Mr.GAMEHIT」立ち上げ
・これまでかかわったゲーム動画広告5,000本以上
・APEX4,000時間プレイ/マスターランク到達
私たちMr.GAMEHITはこれまで多くのゲームのプロモーションに関わり、特にデジタルプロモーションやクリエイティブ戦略に関する実践ノウハウを積んできました。
ゲームプロモーションに携わる立場だからこそ、成功事例を積極的にお伝えして少しでもゲーム業界全体が盛り上がれば嬉しく思います。この記事が、ゲームのマーケティング担当の皆さんにとって有益な情報になれば幸いです。
放置型RPG市場の概要と課題
「もんなし姫騎士団」のプロモーションについて説明する前に、このゲームのジャンルである「放置型RPG」の市場を掴むことが重要です。RPG市場の特性や放置型RPGのポジショニングについてまず解説します。
ポジショニングと市場特性
競争の激しいRPG市場では、放置型ゲームが持つ「ユーザー数が多いが課金額が低い」という課題を解決する必要があります。そのためには、ユーザーをセグメントし、ターゲットに応じた戦略を展開することが不可欠です。
放置型RPGは、スマートフォンゲーム市場の中でも手軽に遊べる点が大きな特徴で、多くのユーザー層に支持されています。しかし、その特性ゆえにユーザーのLTV(顧客生涯価値)が他ジャンルに比べ低い傾向が見られます。
- 放置型RPGはユーザー数が多い一方で、LTVがやや低めの位置にあります。
- IP RPGやアクションRPGはLTVが高いものの、ユーザー数が限定的です。

このような市場特性から、放置型RPGの成功には「いかに効率よくコアユーザーを獲得し、LTVを向上させるか」が鍵となります。
【コアユーザーの定義】
コアユーザーを一言でいうと「ゲームに対して高いエンゲージメントと継続的な課金意欲を持つ、最も重要なユーザー層」です。
今回のゲームについては美少女系の放置型RPGが好きなユーザーが最優先ターゲットとされ、これらのユーザーは高い課金意欲やエンゲージメントを示すため、ゲームの成長にとって非常に重要です。今回のケースでは特に以下の特性を持つユーザーを指します。
- 高いLTV(顧客生涯価値)を持つユーザー:ゲームに対して継続的に課金を行い、ゲーム内で積極的に活動するユーザー。
- 特定のキャラクターやゲーム要素に対して強い関心を持つユーザー:特にキャラクター訴求が効果的で、特定のキャラクターに感情的に結びついているユーザー。
- 放置型RPGや美少女キャラクターに対する関心が高いユーザー:放置型RPGの「手軽さ」や「美少女キャラクター」への愛着を持つ層。
- 初動での積極的なインストールや登録を行うユーザー:事前登録やリリース初週での積極的なアクションを取る、ゲームの初期成功に貢献する層。
初動DL数を最大化する戦略の重要性
放置型RPGを含むゲームアプリ全般は、リリース後のダウンロード数が短期間でピークを迎え、その後急速に減少する「パルス型」のトレンドを持っています。この傾向から、初動でのDL数を最大化する戦略が必要不可欠です。
戦略のポイントは下記の3つです。
- DL数はリリース初週がピークであり、翌週には半減するケースが多い。
- 初週のDL数を伸ばすには、事前登録期のコアユーザー獲得が重要。
- リリース後1ヶ月以降はオーガニックDLが減少するため、広告施策での継続的な獲得が必要。

成功するための運用戦略
RPGゲームでの勝ちパターン
RPGゲーム市場で成功するためには、「事前登録期」「リリース初週」「リリース後」という3つのフェーズそれぞれで明確な戦略を持つことが重要です。フェーズごとに勝ちパターンがあるのですが、今回は事前登録期のポイントを下記に記載します。(リリース後の戦略についてはまた別の記事で書く予定ですのでお楽しみに)
事前登録期の戦略ポイント
- Google AdsとX(Twitter)の活用
・特にXはターゲティング精度が高く、コアユーザーの獲得に効率的。 - 配信開始のタイミング
・リリースの1ヶ月前から配信を開始し、徐々に配信量を増加。 - 目標
・コアユーザーの確保。事前登録単価を目標に設定。事前登録者の90%が自動DLすることを想定。
メディア選定の理由と戦略
広告施策を成功させるためには、適切なメディアの選定が重要です。今回のプロジェクトでは、プレースメントの在庫数やターゲティング精度を考慮し、Google AdsとX(旧Twitter)広告を主要な配信メディアとして選定しました。
ここからは、今回選定した2つの配信メディアにおける戦術について説明します。
Google Adsの運用戦術
Google Adsは、広告配信の大規模性と機械学習による効率化が強みです。
3つの最適化手法がある中で、事前登録期は初週のDL最大化が重要であるため、①のインストール特化最適化を行いました。

Google Adsの主なプレースメントと特徴は以下の3つです。
- インストール特化最適化
・目標: ダウンロード数を最大化し、初動を強化。
・ターゲット: 幅広いユーザー層に配信。
・活用プレースメント: 検索広告や動画広告が中心。 - ハイブリッド最適化
・目標: アプリ内行動(例:ゲーム起動回数、プレイ時間)の増加。
・ターゲット: ダウンロード後も継続的にアクティブなユーザー。
・活用プレースメント: 動画広告を優先的に活用。 - ROAS特化最適化
・目標: 課金ユーザーの獲得を促進。
・ターゲット: LTVの高いユーザーに特化。
・活用プレースメント: 主にバナー広告を使用し、高いROI(投資利益率)を追求。
また、配信先(プレースメント)も大きく分けて3種あり、それぞれの特性に合わせた目的の設定が重要です。
- 検索広告
初期段階でインストールを最大化するために、CPIを抑えつつ高効率なユーザー獲得を狙いました。 - 動画広告
リリース初週において、認知拡大とブランドイメージの形成を目的として積極的に配信。特に6秒や15秒の短尺動画を活用し、視覚的インパクトを重視しました。 - バナー広告
認知拡大フェーズや補完的な配信に使用。GooglePlayStore内でのリマインダーとしての役割を持たせ、他プレースメントで取りこぼしたユーザーをターゲットにしました。

さらに、弊社の運用Tipsを掛け合わせることで、機械学習と人力調整により、従来のGoogle広告よりも高い成果を出していくことが可能となりました。
運用Tipsにはさまざまなものがありますが、一部を記載しておきます。
運用Tips 一例
- テキスト広告は見出しに記号があるほうが効率がよい
- 見出しは短く、ブランド名を表記させたほうが効率がよい
- 説明文はアプリ名次第で表示されにくい
- 動画は6s広告を入れるとボリュームが伸びやすい(15sと枠が異なるため)
- 動画はスクエア/縦型/横型を充実させたほうがボリュームが伸びやすい
- ボリュームに関しては広告スコアに連動する
- 広告スコアとCPIはあまり連動していない
- 1クリエイティブ20CV以上溜まっている状態が機械学習の観点で良い
Xの運用戦術
X(旧Twitter)広告は、ユーザーの興味関心や行動データに基づくターゲティング精度の高さが特徴です。このプロジェクトでは、コアユーザー獲得とターゲット層の深堀りを目的として、以下の運用戦術を展開しました。
ターゲティング設定
ターゲティング精度を最大化するために、以下の3種類の方法を組み合わせて活用しました。
- HNターゲティング
特定のハンドルネーム(アカウント)をフォローしているユーザーや類似ユーザーに配信。
・例: 他の放置型RPGユーザーにリーチし、競合ユーザーを獲得。 - KWターゲティング
特定のキーワードを投稿しているユーザーをターゲットに。
・例: 「放置ゲーム」「RPG」などの関連ワードをツイートしているユーザー。 - 会話ターゲティング
特定のトピックや会話に参加しているユーザーを対象。
・例: 放置型RPGやゲームイベントの話題に言及するユーザー。
配信戦略
配信の優先順位とターゲット層をファネル形式で段階的に絞り込みました。
- RPGゲーム全般ユーザー
・幅広いRPGプレイヤーにリーチし、認知拡大を狙う。 - 放置型RPGユーザー
・放置型RPGを好むユーザーに特化し、興味関心の高い層にアプローチ。 - 美少女系×放置型RPGユーザー
・美少女キャラクターと放置型RPGに特化したターゲット層に絞り込み、ダウンロードコンバージョンを狙う。

クリエイティブ戦略の全体像
プロダクトの分析
クリエイティブを成功させるには、プロダクトの特性や魅力を深く理解することが不可欠です。Mr.GAMEHITでは実際にゲームをプレイし、ユーザー目線での体験を重ね、ゲームの構成要素や魅力ポイントを整理した上でクリエイティブを作成しています。
ゲームの主な構成要素
『もんなし姫騎士団』の主な構成要素は下記の3つです。
- RPG要素
RPGならではのキャラクター育成や戦略性が含まれます。プレイヤーはレベルアップやアイテム収集を通じて成長感を味わえます。 - 世界観
ストーリーや背景設定が独自性を持ち、ユーザーの没入感を高めます。特に「シャッキンシステム」という斬新な設定が、ユニークなゲーム性を提供しています。 - キャラクター
魅力的なビジュアルや個性的なキャラクターが、ユーザーの感情的な共感を引き出します。
魅力ポイントの具体的整理
ゲームを実際にプレイし、ユーザーにアピールすべきポイントは以下の6つであると分析しました。
- 世界観
独自の設定や物語が、ユーザーの興味を引き付けます。 - ストーリー
RPGならではの展開やキャラクター間の掛け合いが特徴的です。 - 魅力的なキャラクター
美少女キャラクターを中心に、多様な個性が揃っています。 - デザイン性
UI/UXのデザインが直感的で、初心者でも馴染みやすい構成になっています。 - オートバトル機能
放置型RPGならではの手軽さを訴求できる要素です。 - オシゴトシステム
キャラクターを派遣し、報酬を得ることで達成感を与えます。
分析を通じて得た理解
このように、構成要素と魅力ポイントを整理することで、広告で強調すべきポイントが明確になります。
今回はRPG要素とキャラクターの魅力を最大限に活用し、ユーザーが感情移入しやすいクリエイティブを作成することが重要であると判断しました。また、オートバトルやオシゴトシステムの手軽さをアピールすることで、日常生活に馴染むゲームとしての認知拡大も狙っていきます。

訴求ターゲットと優先順位
広告運用において重要なのは、ターゲットの明確化と優先順位の設定です。本プロジェクトでは、放置型RPGに興味を持つユーザーを中心に、さらに層を細分化してターゲットとしました。
最優先は、美少女キャラクターに興味を持つ「美少女系×放置型RPGユーザー」です。この層は課金率が高い傾向にあり、効率的にコアユーザーを獲得する上で最も重要なターゲットと言えます。
次に優先すべきは、操作の手軽さを求める「放置型RPGユーザー」を設定し、ゲームのシンプルなプレイ体験をアピールすることです。最後に、幅広いRPGプレイヤー全般をターゲットに含め、ストーリーや世界観といったRPG特有の魅力を訴求しました。
事前登録用の初回クリエイティブとその狙い
事前登録キャンペーンを成功させるためには、ターゲットユーザーに強く訴求し、アクションを促すクリエイティブの制作が不可欠です。今回のプロジェクトでは、以下のポイントに基づいてクリエイティブを設計しました。
クリエイティブ戦略の基本構成
- 指を止める: SNSのフィード上で視覚的なインパクトを持ち、ユーザーの注意を引く要素を組み込みました。
・魅力的なキャラクターデザインやアニメーションを活用。
・世界観を感じさせる背景やデザイン。
・キャッチコピーには短く分かりやすいフレーズを採用。 - 興味を引く: ゲームのユニークな特徴を簡潔に伝えることで、ユーザーに「自分ごと化」させる工夫をしました。
・例: 「ビンボー姫騎士たちが繰り広げるドタバタストーリー」や「片手で気軽に遊べるオートバトル」など。 - 行動を促す: 具体的なアクションを促すためのCTA(Call to Action)を配置。
・「今すぐ登録」「事前登録で限定特典をゲット」などの明確な誘導。

クリエイティブのトンマナ(トーン&マナー)

クリエイティブを制作する上ではトンマナはとても重要な存在です。これを決めておかないと統一感のないクリエイティブになってしまい、認知度アップという目的からもずれてしまいます。
- 色使い:
・明るいパステルカラーを基調に、キャラクターごとのテーマカラーを強調。
・黒など暗い色を使う場合も、80%程度の濃度で柔らかい印象を持たせるよう配慮。 - フォント:
・太めで親しみやすいデザイン書体を使用。
・必要に応じて、視認性の高いゴシック体を組み合わせ。
主なクリエイティブの例
実際に制作したクリエイティブ例を一部お見せします。
- 雰囲気訴求:
・RPG好きのユーザーをターゲットに、ゲーム全体の雰囲気を伝える動画を制作。
・6秒以内に複数のプレイ映像を盛り込み、ユーザーにゲームの多様な魅力をアピール。
- キャラ複数(世界観)訴求:
・キャラクターの立ち絵やダイナミックなカメラワークを活用して、リッチな世界観を表現。
・背景にはキャラクターの色やイメージを反映し、統一感を持たせました。
- どっちが好き?訴求:
・2人のキャラクターを並べて選択肢を提示する演出。
・「どっちの娘が好き?」という問いかけでユーザーの興味を引きつけます。
これらのクリエイティブは、ターゲット層に響く訴求力を持ちながら、ユーザーに登録アクションを促進するよう設計されています。特に「キャラクター」や「手軽さ」を強調することで、ゲームの魅力を効果的に伝えることを目指しました。
事前登録プロモーションの施策まとめと結果

事前登録期間では、リリース時の初動ダウンロード数を最大化するために、効率的なユーザー獲得を目指しました。そのためには、事前登録者をできるだけ低いコストで獲得しつつ、LTV(顧客生涯価値)が高い層を集めることが必要でした。
特に、美少女系RPGというジャンルの特性を活かし、ターゲットユーザーに最適なクリエイティブと配信戦略を組み合わせることが重要なポイントであったと考えています。
施策
広告の配信は、Google AdsとX(旧Twitter)広告を中心に展開しました。それぞれのメディアの特性を考慮し、Xではターゲティング精度を活かし、RPGプレイヤー層を狙った広告を配信しました。Google Adsでは、UAC(ユニバーサルアプリキャンペーン)を活用し、検索、ディスプレイ、動画など多面的なアプローチを展開しました。
クリエイティブについては、複数の訴求軸でA/Bテストを実施し、特に「キャラクター単体をフィーチャーした広告」「ゲームの世界観を訴求した広告」「ゲームシステムを説明する広告」の3つのパターンを比較しました。
結果
事前登録広告の最適化により、目標CPI(インストール単価)を達成することができました。
3つの訴求パターンを比較した結果、キャラクター訴求が最も効果的であることが判明しました。特定のキャラクターに焦点を当てた広告は、クリック率が高く、事前登録へのコンバージョン率が他の訴求軸よりも優れていました。
キャラクターを前面に押し出したクリエイティブは、他の訴求軸と比較してクリック率が15%以上高く、事前登録者のダウンロード率も向上しました。また、競合の平均CPIより63%安く獲得できました。
最終的に、事前登録単価は計画値の範囲内に収まり、リリース時にスムーズにユーザーを獲得する基盤を整えることができました。
まとめ
近年、一般的になった「事前登録」というシステムですが、ゲームの期待度や認知度を高めることができ、リリース直後からユーザーを集めることができる上にマーケティングデータも集めやすいというメリットがあります。
今回はスマホゲームにとって重要な事前登録期にフォーカスした戦略について大公開させていただきました。Mr.GAMEHITはゲームの本質を深く理解した担当者が、PV・動画クリエイティブ制作から広告運用まで一貫してサポートする体制であり、ゲームのプロモーションに関するナレッジも豊富なため、このような成果を出すことができます。
次回は、実際にゲームがリリースされた後の運用と改善戦略、その結果についてもご紹介しますのでお楽しみに!

